存在感のあるデザイン

手作り指輪 プラチナ イエローゴールド

こちらの指輪は西宮市からお越しの男性が手作りされた指輪です。彼はまだ学生さんでした。自分にとっての初めての指輪を手作りしに来て下さいました。

サッカーをしていると言う彼は短髪でよく日に焼けていて前歯がとても白く見えました。工房に入るなり「結婚指輪じゃなくても大丈夫ですよね?他のお客さん来ます?」と1人で来られたことを気にしているご様子でした。偶然その時は時間の近いお客様が居られなかったので「1人で来る方も大勢居られるし、今の時間は他の方がいらっしゃらないので大丈夫ですよ!」とお伝えすると落ち着いたのか椅子に座って下さいました。

彼は最近ラップミュージックにはまっているそうで昔から習っているダンスと合わせてプロのアーティストを夢見ていると言うことでした。ダンスはヒップホップ系とストリート系が得意だそうで、見てみたいと私が言うと椅子から立ち上がって少しだけ大人し目なのを踊って見せてくれました。すごくかっこよくて素人離れして見えました。ラップの方は友達と練習中らしく、まだ人に聞かせられるほどではないと話しているだけで耳まで真っ赤にされていました。この日はプロを目指す自分を鼓舞する指輪を頑張って貯めたバイト代で作りたいと来て下さいました。何だかこちらまでやる気がみなぎってきたのを思い出します(笑)。

プラチナとゴールドの2色づかいで太い幅のリングがご希望でした。スマホを取り出して憧れのアーティストさんのライブ写真の手をアップして「こんなんがいいです。」と見せて下さいました。指輪の部分をアップにしたのではっきりとは見えないのですがの雰囲気は掴めたので、なるべく近くなる様に削って作っていくことになりました。指のサイズは大きくなかったので良かったのですが、幅を太めにするとイメージ通りにはなるけれど選ぶ金属によっては予算内に納まるのか心配ですとお伝えすると「プラチナで作りたかったんで結構持って来たつもりです。この4ミリくらいのでどれくらいになりますか?」「3ミリ幅だったら?」という感じで綿密にご相談させて頂き、プラチナに重なる部分はイエローゴールドのコーティング加工、幅も厚みもワックス重量を測りながら作っていくことになりました。

厚みのあるワックスを理想の太さの幅に削って頂き、少し厚みもとってから一度重量を計測。ご予算に合わせながら幅を少しずつ調節しながら完成時のおおよその重量を予測してギリギリのところで削るのをストップ。両サイドの縁から少しだけ幅をとって段差になるラインを描き、それに沿って慎重に筋を彫って頂きました。精密ヤスリを使ってその筋を入れたところまでを段差になる様削って下げていきます。男性はとても作業が丁寧で力加減もちょうど良い感じで削っておられたので段差をつける作業も無事に出来ました。「どうですか?楽しんでますか?」と尋ねたら「こういう作ったりするのは親に仕込まれてますから結構得意な方で、サッカーのクラブでもシューズのメンテナンスやユニフォームの修繕は自分でやらされてるんで裁縫も得意っす!指輪は初めてだけど楽しいですね!」と言って下さってました。近頃の男性は何でも出来るのですね。

プラチナ素材と段差のある部分は少しでも重量を軽くするために角を取って丸みのあるフォルムに仕上げていきました。結果、軽くなって予算内にしっかり納まり、デザイン的にもご本人の好みになって一石二鳥となりました。「うわーヤバい!楽しみやー!!」と大興奮の彼は写真を撮ってお友達に完成したとメールをしておられました。理想の感じで出来上がり、何よりとても喜んで頂けて私もお手伝いを頑張った甲斐がありました。『自分を鼓舞するファーストリング』完成です!

「夢が叶ったら刻印を入れに来ます。また会いましょう!」と笑顔で工房を後にされました。きっと彼なら頑張ってくれると信じてます。夢が叶って再会出来ますのを心から楽しみにお待ちしております。自分の為の意味深いリングを私も作ってみたくなりました。当工房での指輪のご制作、誠にありがとうございました!

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